これは1995年1月の阪神・淡路大震の時の話しです。
当時、まだまだ1人前の大工になっていない私は、1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災の次の日には神戸に行き、新開地公園で氷水の沼の中で仮設住宅の基礎を作っていました。
そのまま、風呂無し、寝る場所無し、食べ物もほとんど無しの状態で仮設住宅を造り続けるという流れになりました。
現場は24時間営業。倒れるまで作業をする。
当時の現場は24時間営業です。
現場で倒れるまで作業をする。
倒れたら、そのまま現場で寝る。
3~4時間後に目覚めたら作業開始。
という感じで、風呂は2週間に1度なんて過酷な生活でした。
電気が止まると、電源コードリールが盗まれている
丸のこで切っている最中に、電気が止まるので、ブレーカーを見に行くと電源コードリールが盗まれている。
1つの仮設電気で数十人の大工さんが工事をしているので、みんな大騒ぎしている中
大騒ぎしている中、大工道具が盗まれる
電源コードリールが盗まれて、みんな集まって大騒ぎしている時に、大工道具が盗まれているのです。
素人大工だらけ
隣の大工さんが、やたら色々と作業の方法を聞いてくるので大工経験が少なそうだなぁと思っていたら「昨日まで○○県でガードマンをしていました。」という訳。
大工道具は1つも持っていないで「私は大工です!」と嘘を言って仮設住宅の工事現場で働く人が全国から沢山集まっていました。
そんな人に大工工事が出来る訳がありません。道具は盗んできたものばかりで仕事をしているのですから。
窓枠、玄関框、ドア枠が盗まれる。
私は大工ですから、未経験者の大工さんよりは当然、早く仕事が出来る訳です。
私が1部屋1週間で完成させると、素人の偽物大工さんは1ヶ月以上掛かる訳です。
私は1週間で1部屋終えて、次の部屋、次の部屋と造作していきます。
最終、1棟全てが完成すれば、会社の造作完成検査があり、自分の作った部屋には立ち会います。
自分が作って完成している部屋に入ると、窓枠、玄関框、ドア枠まで外されて、ありません。
窓枠、玄関框、ドア枠が盗まれているのです。
犯人は想像が付きます。
窓枠を切るのを失敗しそうな大工。
玄関框、ドア枠を切るのを失敗しそうな素人大工。
現場監督さんは「材料を注文しておくので、材料が現場に入ったら施工してね。」と私に言ってます。
もう、腹が立って、腹が立って。
でも、従うしかありません。
何回、きちんと施工しても、材料を盗まれたり、道具を盗まれたり、震災当時の被災地の工事現場は地獄でした。
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